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盲目の剣客を主人公にした革新的アクション時代劇『座頭市』シリーズ【おすすめ作品紹介】

man holding clapper board

日本映画最盛期の60年代。

それは『用心棒』や『椿三十郎』を送り出した黒澤明全盛期の時代であり、時代劇がブームとなっていた時代でした。

そんな中、時代劇の中に革新的なヒーローアイコンとして登場したのが、盲目の剣客を描いた映画『座頭市物語』です。

勝慎太郎が創造した「座頭市」は盲目の座頭としてへりくだった振舞いをしながら、いざ刀を抜くと敵を圧倒するという、元祖「舐めてた相手が殺人マシーンだった映画」と言うべき存在。

「盲目でありながら居合斬りの達人」という、革新的で他にはないハンディキャップヒーローの登場は、アジアを中心に世界の国々へ大きな衝撃を与えました。

本記事では、今なお色あせないエンターテインメントの面白さをもつ座頭市シリーズの魅力とおすすめ作品を紹介します。

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世界に衝撃を与えた『座頭市』

日本でも人気の座頭市シリーズは世界でも人気を博し、今もなお親しまれていることで知られています。

香港では座頭市に影響を受けて作られたハンディキャップヒーロー、隻腕の剣士を描いた『片腕必殺剣』が人気を博し、座頭市ともコラボしました。

また、現代アクションの祖であるブルース・リーも座頭市の影響を受けていることが知られています。

アメリカでは、シリーズの中でも評価が高い『座頭市 血煙り街道』がルドガー・ハウアー主演でリメイクされました。

また、2016年、スター・ウォーズシリーズのスピンオフ作品である『ローグ・ワン スター・ウォーズ ストーリー』には座頭市を意識した盲目の僧侶、チアルートが登場。

そんなキャラクターを香港のアクション俳優、ドニー・イェンが演じてシリーズ屈指の人気キャラクターとなりました。

盲目でありながら最強というキャラクターと哀愁深いストーリーは未だなお衝撃をもって世界に影響を与え続けています。

座頭市シリーズおすすめ作品7選

座頭市物語

映画のスクリーンにはじめて座頭市が登場したのが『座頭市物語』です。

監督は時代劇の巨匠として知られる三隅研次。

当時最大級の映画会社「大映」に籍を置いていた勝新太郎は、同期の大スター市川雷蔵に比べて売れない俳優でした。

そこで目を付けたのが、たった数ページの短編小説『座頭市物語』でした。

この短編にインスピレーションを得た、勝新太郎は自ら頭を剃り、一世一代の大勝負に出たのでした。

本作のストーリーは、抗争真っただ中のヤクザが牛耳る町で、座頭市が用心棒として雇われるというもの。

誰もかもが欲と暴力に目を眩ませる中で、座頭市は敵方の用心棒である平手造酒と心を通わせます。

しかし、平手造酒は病に冒されており…。

1962年の作品ながら、男同士の鮮烈な友情が描かれているブロマンス映画なのが『座頭市物語』です。

お互い敵方に身を置きながら、気にすることなく絆を深めていく様は、まさに時代劇版ロミオとジュリエット。

三隅研次監督の映像美も手伝って、白黒映画ながら色あせない、現代的な魅力に溢れた作品となっています。

座頭市千両首

座頭市シリーズ第六弾である『座頭市千両首』は百姓から無実の罪を疑われた座頭市がその疑いを晴らすために自らドスを抜くというもの。

本作の見どころはなんといっても勝新太郎の弟、若山富三郎との共演。

邪悪な用心棒として座頭市の前へ立ちふさがるキャラクターを熱演しました。

座頭市との居合対決のシーンやクライマックスでのバトルは勝新太郎捨て身のスタントもあって、名シーンとして今もなお語り継がれています。

座頭市あばれ凧

座頭市シリーズ第七弾の『座頭市あばれ凧』は花火で賑わう町でのヤクザの出入りに巻き込まれた座頭市の活躍を描いた作品です。

花火を仕切る文吉親分の娘、お国に助けられた座頭市はその恩義に報いるため、又吉親分の一家に身を寄せます。

盲目ながらも、ただ花火の日を楽しむ座頭市。

そんな彼と又吉親分の一家に悲劇が襲うとも知らず。

座頭市は普段、誰かから襲われない限りドスを抜かない人物ですが、『座頭市あばれ凧』では激怒のあまり復讐のため自らドスを抜く姿を見せます。

盲目でありながらも、虚空に目を向けて花火を見たいと願う座頭市の姿が哀愁を誘う傑作です。

座頭市血笑旅

座頭市シリーズ第八弾『座頭市血笑旅』では、第一作目の監督『座頭市物語』の三隅研次がカムバックを果たしました。

手違いで殺された女性の赤ん坊を父親の元へ届けることになった座頭市は、自身の命を狙う悪党と戦いながら赤ん坊の世話をするという異色の作品。

赤ん坊を世話する内にどんどん思い入れが強くなってしまい、離れがたくなってしまう座頭市。

しかし、どんなに腕っぷしが強くても盲目の自分は無力であると突き付けられるラストは切なく涙を誘います。

袖が燃えた状態でドスを振るう衝撃の殺陣も必見の大傑作です。

座頭市 血煙り街道

座頭市シリーズ第十七弾。

宿で親子と同室になった座頭市ですが、母親が病に臥せってしまい、そのまま回復することなく息子を残して亡くなっていまいます。

母親を弔った座頭市は、息子を連れて父親の元へ届けようとするも、子供の父親はヤクザの陰謀に巻き込まれており…。

本作のみどころは、座頭市と生意気な少年との心の交流と、往年の時代劇スター近衛十四郎との共演です。

近衛十四郎と言えば松方弘樹の父親としても知られていますが、実際には戦前から戦後にかけて活躍した剣豪級の腕を持つ剣戟スターだったのです。

雪の中、近衛十四郎と座頭市が刀を振るう殺陣は、アクション映画史に残るリアリズムとスタイリッシュさを両立し、60年代とは思えないアクションを見ることができます。

座頭市シリーズの中でも王道的プロットで人気の高い本作は、ハリウッドでもルドガー・ハウアー主演でリメイクされました。

三隅研次監督の映像美も光る、必見の作品です。

新座頭市 破れ!唐人剣

『新座頭市 破れ!唐人剣』は、香港の大人気シリーズ『片腕必殺剣』とコラボレーションした唯一無二の作品です。

もともと香港でも高い人気を誇る座頭市ですが、それに影響を受けて作られたのがチャン・チェ監督の『片腕必殺剣』でした。

暴力を嫌いながらも武術を手放せず、片腕になっても誰かを助けるためその腕を振るう隻腕のヒーロー、ファン・カンは香港でもアイコニックなキャラクターとして親しまれてきました。

そんな『片腕必殺剣』と『座頭市』がコラボレーション。

それはまだブルース・リーが出てきておらず、香港映画の知名度が低い日本では異例中に異例でした。

ハンディキャップヒーロー同士の激突は、アジア映画でも類をみない、奇跡的コラボレーション映画でしょう。

座頭市と用心棒

時代劇を代表する名作として、日本どころか世界でも有名なキャラクターが三船敏郎演じる『用心棒』でしょう。

そんな三船敏郎が座頭市に出演した時のタイトルが『座頭市と用心棒』でした。

三船敏郎演じる用心棒と座頭市の、金塊を巡る腹の探り合い。

昭和を代表する名優同士の掛け合いは、まさに必見です。

監督はあの庵野秀明も影響を受けたとして知られる鬼才・岡本喜八。

いつもと勝手違いのトーンの出る『座頭市と用心棒』ですが、他にはない名シーンの連続で観客を飽きさせません。

三船敏郎と勝新太郎という豪華二大スターの共演を是非見てみてください。

まとめ

ヒーローとは不屈で強く、かっこいいものというのが共通の価値観でしょう。

しかし、座頭市は盲目であるが故に小汚く、弱点もあり、普通の暮らしすら手に入れることができない、そんな哀愁のこもったキャラクターとなっています。

座頭市が革新的なのは、ただ目が見えないというだけでなく、目が見えない故の悲哀が描かれているからです。

そんな国民的ヒーローとして知られる座頭市ですが、時代性を正確に描いているが故に、盲目の人に対する差別用語が本編には使われています。

そのため、2021年現在の日本では、地上波放送などでは見ることができません。

今もなお世界に影響を与えているにも関わらず、今はデジタルセルやDVDといった形でしか視聴できません。

ですので、もし気になったのならば、この『座頭市』シリーズ、是非見てみてください。

そこには、その時代にしか作れない革新性と、現在でも通ずる普遍的な面白さが存在しています。

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